この記事のまとめ
- ビッグデータは、選手の獲得だけでなく、相手の分析・自チームの分析・ケガのリスク管理・練習計画まで、クラブのさまざまな場面で使われています。
- 本部のブログは、セビージャ FC のモンチ氏による選手獲得、ケビン・デ・ブルイネの契約交渉とメンフィス・デパイの移籍先選び、2014 年のドイツ代表を例に挙げています。
- データは万能の答えではなく、「煙」と「信号」を見分ける力が要る、という点が共通しています。GPS の計測は、練習と復帰の判断を支える材料の 1 つです。
映画「マネーボール」のように、数値を使って選手を見つける話は、いまやプロの世界の一部になっています。ただ、現場の指導者にとっては「ビッグデータ」という言葉が大きすぎて、自分のチームの話に結びつけにくいこともあります。
この記事では、OLIVER SPORTS 本部のブログ(2022 年 7 月 18 日)をもとに、ビッグデータがサッカーでどう使われているかと、練習の場で使うデータとの関係をまとめます。
ビッグデータとは何か
本部のブログは、ビッグデータを「量も複雑さも大きく、従来の方法では処理しにくい、あるいはできない情報」と説明しています。そこから結論を引き出すために、専用の技術やツールが使われます。サッカーの 1 試合でも、数千万件のデータが生まれると述べています。
使い道は、移籍の方針から試合の分析まで、アイデアとツール次第で広がります。データはもともとそこにあり、違いは扱い方にある、というのが本部のブログの見方です。選手の獲得に使うだけでなく、ケガのリスク管理、相手の分析、プレーの改善にも使えるとしています。ビッグデータの歴史については、「サッカーのビッグデータの歴史|基本の記録から活用の広がりまで」も参考になります。
セビージャ FC の例:データで「誰も見ていない選手」を探す
サッカーのスカウティングは、人が試合会場へ足を運び、何時間も映像を見て選手を探す仕事でした。本部のブログによると、近年はそこにビッグデータが加わっています。
スペインで象徴的な例として挙げられているのが、当時セビージャ FC のスポーツディレクターだったモンチ氏です。「安く買って高く売る」という考え方のもと、ビッグデータのツールを活用して、「誰も見ていない」選手を見つけてきたと紹介されています。進め方は次のとおりです。
- AI・機械学習・ビッグデータの部署をつくる
- 獲得候補になりうる数万人規模の選手のデータベースを整える
本部のブログによると、セビージャは 2005 年までのクラブの歴史で 4 つのタイトルを獲得し、直近の 15 年間で 10 のタイトルを獲得しています(2022 年 7 月 18 日時点の本部の記載)。
モンチ氏は、データには以前からあったが、いまは量がはるかに多いからビッグデータと呼ぶのだと話しています。ビッグデータは万能薬ではなく、すばらしい助けであり、肝心なのは「煙」と「信号」を見分ける力だという趣旨です。本部のブログは、いまは選手の指標と成績を把握しないまま獲得するチームはない、と述べています。
選手がデータを使う例
| 選手 | 本部のブログの紹介 |
|---|---|
| ケビン・デ・ブルイネ | 代理人を通さずに、データの力を借りて契約を交渉 |
| メンフィス・デパイ | 2017 年、マンチェスター・ユナイテッドでの 2 シーズンの後、移籍先を決めるためにデータ分析の会社 SciSports に相談 |
デパイのケースでは、本人が「自由にプレーできて、チームにとって重要な存在になれること」と「ヨーロッパの 5 大リーグのいずれかであること」を望んだと紹介されています。SciSports はまず PSV とマンチェスター・ユナイテッドでのプレーを分析しました。イングランドでは守備の役割が多く、当時の戦い方が持ち味を出しにくかった、という見立てです。
そのうえで、同じポジションにスター選手がいないか、切り替えとパスの速さ、チームの安定感、戦い方、将来の見通しなど、複数の観点をデータに入れて検討しました。最終的に、本人のプレーに合う 5 つのクラブをまとめたレポートを作成し、その 1 つがリヨンでした。契約の交渉はクラブと代理人の仕事で、SciSports の仕事はそこまでだと、創業者のギールス・ブラウワー氏は話しています。
本部のブログは、その後のリヨンでの活躍と、2020 年のチャンピオンズリーグ準決勝進出、FC バルセロナへの移籍も紹介しています。ただし、これらは移籍先の選択の結果として紹介されているもので、データ分析だけで説明できるわけではありません。
移籍以外の使い道
- 相手と自チームの分析:クラブで最も多い使い方の 1 つです。2014 年にワールドカップを制したドイツ代表は、SAP のツールで 1 回のボール保持の平均時間を 3.4 秒からおよそ 1 秒に縮められた、と選手たちが話しています。本部のブログは、準決勝のブラジル戦の 7 対 1 にもつながったと紹介しています
- GPS による個人別の計測:選手ごとの指標を集め、パフォーマンスの向上と練習の計画に使います。1 人ひとりを別々に追えるので、見ただけでは分かりにくい点を確かめられます
- ケガのリスク管理と復帰:選手どうしの負荷を比べ、リスクが高そうな時期や、競技復帰の準備ができた時期を知る材料にします。復帰の可否は医師などの専門家に相談してください
ドイツ代表の例について、当時のドイツ代表を支えた SAP のブランドアンバサダー、ビアホフ氏は、どのチームも相手に対する優位性を得る新しい方法を探している、と話しています。
当時の OLIVER と、現場全体への波及
この記事が書かれた 2022 年は、チーム向けの OLIVER PRO の発表(2023 年 12 月 19 日)より前です。ここでの「OLIVER」は当時の製品名です(チーム向けは現在の OLIVER PRO)。本部のブログは、当時の OLIVER を、Web ポータルとモバイルアプリで選手の細かな動きの情報を見られるトラッカーとして紹介しています。プロからアマチュア、女子、フットサル、ユースまで、幅広いチームに広がっている、という内容です。
本部のブログは、当時 OLIVER のアンバサダーで、ブラジルの FC SKA の会長だった、2002 年のワールドカップ優勝メンバーのジョゼ・エドミウソン氏の「OLIVER は選手の成績を見るだけでなく、クラブ全体に知識を生む基盤になる」という趣旨のコメントを紹介しています。
現場で活かすための見方
ここからは、日本語版で加えた整理です。
- プロの事例は、データを意思決定の材料の 1 つとして使っている話です。データだけで結論を出す話ではありません
- 練習の場では、まず見る指標を絞り、同じ条件で継続して計測することが、その後の比較の材料になります
- 数値の読み方は、選手の年代・ポジション・時期によって変わります。必要に応じて専門家に相談してください
日本の現場では
高校や大学への進学を控えた選手を見る場面や、4 月の新年度にカテゴリーを組み直す場面では、指導者の目に加えて、練習で積み上げた数値を共有できると話が進めやすくなります。現在の OLIVER PRO で自チームの数値を集め、年代ごと・ポジションごとの目安を作る進め方は、デモのご依頼からご相談ください。
出典
- この記事の原文:OLIVER SPORTS 本部のブログ「Big Data: How technology and data are used to sign players?」(英語、2022 年 7 月 18 日)
- 「サッカーのビッグデータの歴史|基本の記録から活用の広がりまで」(日本語版、2024 年 6 月 19 日)
参考:原文(英語)
この記事について本記事は、OLIVER SPORTS 本部の公式ブログに 2022 年 7 月 18 日に掲載された記事「Big Data: How technology and data are used to sign players?」の日本語版です。日本の読者向けに、OLIVER SPORTS JAPAN が要点をまとめ直し、「日本の現場では」の欄を書き足しています。記事の中の数値や製品の内容は、元の記事が掲載された時点のものです。この日本語版は 2026 年 11 月に掲載しました。日本で提供する内容や価格は、記事の内容と異なる場合があります。機能によっては、ご契約の内容で使える範囲が異なります。国内での導入と運用のサポートは、OLIVER SPORTS JAPAN が行います。掲載している画像・ロゴは OLIVER SPORTS 本部の許諾を得て使用しており、権利は OLIVER SPORTS 本部または各権利者に帰属します。OLIVER SPORTS JAPAN は、STC 株式会社が運営する日本の総代理店です。


